旬と節句

  • 今はいつでもどこでも食材を手に入れられるようになり、すっかり季節感が乏しくなりました。旬と言われてもわからない、という人が増えて来たのは、残念でなりません。野菜にも果物にも魚介類にも旬があります。旬はその食材が最も多くとれる時期で、うまみが増して一番美味しいのです。しかも栄養価が高くて安価です。
    暑い時期にはからだを冷やすものが、寒い時期にはからだをあたためるものが収穫されるようになっています。ですから、自然のリズムに合わせて旬を食べることが健康を守ることにつながります。
    素晴らしい四季に恵まれた日本では、かつては旬のものを食べられることに感謝しました。そして1年がかりで白米を作り出し、食生活の中心としてきました。でも先人たちにとって、「作り出す」労働はとても厳しいものでした。そこで、健康管理や病気予防のために、知恵を絞って「節句」という行事を考え出したのです。節句料理は季節の食材を生かして作られます。正月三が日は栄養バランスのとれたおせち料理に延寿屠蘇散を飲みます。節分(2月3日)はイワシと豆の行事です。桃の節句(3月3日)には薬効のある杏仁湯、端午の節句(5月5日)には、田植えに備えて菖蒲湯に入り、皮膚やからだを整えました。9月の重陽の節句(9月9日)は稲刈りの季節に貧血予防のために、鉄分の多い菊を食べたのです。
    先人たちは科学的な知識も無かった時代ですが、永年積み重ねてきた経験によって、節句を通して私たちに健康を守るための最善の食材として語り継がれてきたのです。これから、毎月その季節の節句の持つ意味と合わせて、旬の料理をお伝えしていきます。