愛され豚汁”の秘めたるパワー

一段と冷え込みが激しくなってきましたね。
そんなときに食べたくなるものの代表格である「豚汁」。
豚肉やごぼう、にんじん、じゃがいもなど、たくさんの具材がスープに溶け込み、味噌が香りを添えます。
豚汁が愛される理由は、なんといっても食材の旨味が溶け込んだスープ。
鶏や牛とは違う豚肉独特の風味や歯ごたえが、伝統的な日本料理にはないおいしさを生み出し人々を魅了してやみません。
寒い日に食べる温かい豚汁は、最高のごちそうですね。

では、豚汁は一体いつから食べられているのでしょう?
 天武天皇が最初の「肉食禁止令」を出してから、およそ1200年にわたり日本では牛や豚などの肉はNGだったため、実は、豚汁の歴史はそれほど古くはないとされています。
ルーツは諸説あり、けんちん汁に肉を入れたという説、ぼたん鍋を参考にしたという説、旧日本海軍においてカレー粉の代わりに味噌を入れて作ったことから始まったという説、北海道の開拓を行った屯田兵が食べた「屯田兵の汁」を「屯汁」と呼ぶようになったという説、薩摩汁の豚を使うものが独立したという説など、さまざまあります。
しかし、肉食が禁止されていた時代でも、獣肉は人々の間で病人の養生や体力増進のための「薬食い」と称し、ひそかに食されてきたそうです。
また、味噌は、肉の臭みをやわらげる「マスキング効果」があるため、肉を食べるには最適の調味料であったのでしょう。

おいしさに加え、見逃せないのが豚汁の栄養価。
一品でたんぱく質、ビタミン、ミネラルなどさまざまな栄養素をとることができ、これ一杯で、忙しい現代人の健康面と美容面をカバーできる優れモノ。
味噌は、どんな具材とも相性がよく、季節に合わせて材料もアレンジできる通年レシピです。
使い切れず余った野菜などは、すべて豚汁に入れてしまいましょう!
 簡単、おいしい、体にいい、冷蔵庫もすっきり…、まさに「一石四鳥」です。

老化の大きな原因は、細胞脂質が酸化して過酸化脂質が発生することといわれていますが、老化を遅らせるためには、この過酸化脂質の発生を抑える、抗酸化作用のある食品をとることが大切とされています。
大豆そのものにも抗酸化作用がありますが、味噌は大豆に比べ、はるかに高い抗酸化力があることが発表されています。
『みそサイエンス最前線』(みそ健康づくり委員会)によると、味噌に加え、ビタミンB1の豊富な豚肉が入ることで、活性酸素の消去にさらに有利な一椀になりえる、とあります。
また、豚肉に多く含まれるビタミンB1の吸収を高めてくれる成分「アリシン」は、長ねぎや玉ねぎなどに多く含まれ、豚汁に合わせるには最適です。
また、七味は食欲を増進させる効果が。

普通の豚汁では物足りないという方は、具材をごま油でさっと炒めたり、牛乳や豆乳を加え洋風テイストにしたり、カレー粉を入れてカレースープにしたりと、リメイクを楽しんでください。